2017年6月13日
「ユリトピア」というビアン百合ソーシャルネットのリンクを貼りました。僕も参加しています。
2017年2月4日
何も変わっていませんが本年もよろしくお願いします。
2016年2月2日
本年もよろしくお願いします。
2012年7月21日
あの黒歴史SNSこと『Girlx』が別の形で帰ってきた!
かのかのちゃんねるオープン!!
2012年2月8日
サイト内CSSマークアップ改良作業中。
2010年12月10日
あと半年は大丈夫(振り込んできました)
2010年7月19日
サイトデザイン改装中です。
2010年6月1日
チャットルーム必要ないなーと思って消しました。
2009年11月27日
チャットルームをつけました。
2009年11月17日
リンク間違い修正。
2009年11月16日
またしても引越ししました。これからもよろしくお願いします。
2009年2月16日
SNS『GIRLX』:1月31日から続いていたデータベースによる不調(生データのバグ)のため、凍結。経緯はgirlx.jpを参照。
2008年9月15日
リスタートしました。これからもよろしくお願いします。
2008年9月9日
前ブログ時のラブレター移植作業中です。
2008年9月9日以前
前サイトがperfume物件を扱ったという事で消滅しました。ラブレターやコメントについて必死にサルベージ中です。

「彼女から彼女への手紙」について

大人の人も未成年の人もいらっしゃいませ。

このサイト『彼女から彼女への手紙』では女性から女性へのラブレターや、悩み相談などを受け付けています。 もし貴女が、同性への恋愛感情で人には言えない、誰にも話せない、ましてや想い人である女性に心に溜まっている気持ちを打ち明ける事ができないのであれば、『彼女から彼女への手紙』はいつでも貴女のラブレターや悩み相談をお待ちしています。掲示板に寄せられた過去ログを読むだけでもちょっと気が楽になるかもしれません。

密かに恋している彼女宛てにラブレターを書いてみる?

というわけでさっそく気になるあの子へ秘密のラブレターを書いてみましょう。…とは言ってもいきなりは書けないものです。そこで、ノートやパソコンのメモ帳に書いてみて、その手紙をこの場所にコピー・ペーストするという方法を薦めます。他の人がどのようにラブレターを書いているのかを見てみるというのも良いでしょう。トップページのラブレター投稿窓口を用意しましたので、いつでもラブレターを投稿してみてください。

 さん

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卒業は死神

Pixivのショートストーリー

scene 1

開いていた携帯の液晶に雪がひとつ落ち、液晶の画面を伝って地面に落ちるのを見て、私は携帯を閉じ、コートのポケットの中に仕舞った。何かメールを打っていたのではなく、見ていたのでもなく、ましてや携帯でインターネットを見ていたのではない。何もする事が無かったから携帯を開いて、待ち受け画面と今の時刻、アンテナ感度、残りの電池を確認しただけだった。
今は午後の4時34分。これから遊ぶ予定なんてなく、早く家に帰りたいわけでもなく、コンビニやどこかに寄りたいという事もなく、ただ、学校近くの公園、屋根がある場所で、音も無く降り続ける東北の雪を見続けていた。見続けるしかなかった。何も見るものが無いからだ。東北の雪は何もかもを億劫にさせる。東北の雪は北海道の、まるで地面に突き刺すような鋭い雪とは違うものだ。冬の北海道には行った事がないが、テレビでのニュースなどを見る限り、私はそのような印象を持つ。東北の雪。東北の雪は柔らかい綿を千切って雲の上から落としたように一つ一つの雪の粒が大きく、ふわふわと冬の風に舞い、やがて鉛のようにべったりと重く町全体に貼りつく。
今年初めての初雪、雪は天使、ホワイトクリスマス、スキーリゾート。雪と密接な関わりを持たない人たちは雪に対してそのような良いイメージを持つ。東北に住んでいないからそういう事が言えるのだ。東北に住む者にとって、東北の雪が好きなのはまだ小さい子供だけだ。子供の登下校、蛍光色のようなパステルカラーのような水色や黄色やピンクの全身防寒具を着て雪で遊びながら歩く子供の姿を見ると、私はもうそこに戻れない事を知る。小学生から中学生になる頃に訪れる思春期は何もかもを残酷に映しだす。中学校には小学校ほどの自由がなく、制服やジャージは地味で、小学校の時に夢見ていた中学校生活の現実を味わう事になる。空はコンクリートで作られた建物のようなグレー色、目の前はどこまでも終わりの無い白の壁。綿のような雪で遠くの建物が見えない。見えたとしても山があるだけなのだが。楽しいものが何も無く、テレビで知った音楽アーティストの事やバラエティ番組とお笑い芸人の事をただ延々とお喋りするこの田舎では、この東北の雪は閉塞の象徴なのかもしれない。
こうして考えている間にも降り続ける雪が私の毛糸の帽子や紺のコートの肩に積もっていく。手袋をした手で払おうとしても、綿で出来たふかふかとした生地ではどうしても雪が払えきれず、残る。革で出来た薄い鞄も、払おうとすればするほど雪がこびりついて取れない。今日は1月12日。3学期の始めから日数が経っていないので特に憂鬱なのかもしれない。来年は、ああ、センター試験らしいがどうにも実感が持てない。私はまだ進路を決めていない。どうして進路というものがあるのか。どこにも行けやしないのに。雪の粒が頬に落ちたので指で払った。
ここにいてもどうしようもないので帰ろうとした時、コートの中で携帯が鳴った。ポケットに入れていた携帯を取り出す。美和からだった。

「もしもし?」

「あ、裕香?今どこにいる?」

「学校前の公園だけど」

「ちょっと待ってて、私も一緒に帰る」

「ん、わかった、待ってるね」

予定が出来てしまった、と私は思った。ここにあと数分居なくてはならない。私と美和は友達だ。小学校の時から一緒だった。だからと言って子供の頃を思い返すほどでもない。美和は昔から私についてきた。何をするのにも一緒が良いと言い出し、中学や高校の部活も一緒になった。
私は正直、美和の事が少し鬱陶しかった。美和がいつも側にいるせいで友人関係が限定されるからだ。私が美和の他に友人を作ろうとすると、いつも美和が干渉してきて、ダメになった。他の人から見れば私たちは仲が良く、親友という事になるのだろう。まあ、来年、卒業したら私と美和は離れ離れになるだろう。卒業も悪くないなと少しだけ思った。美和はまだやってこない。


scene 2


お元気ですか…というのもヘンだね。

こうやって手紙書いたのって小学生の頃以来かな。年賀状とかは毎年送りあっているけど、手紙ってそういえばなかったよね。書きながらちょっと恥ずかしいかな。

この間、テレビを見ていたら手紙を配達日を指定できるという郵便局のサービスを知ったんだ。そんなのやってるんだ、と思ってこの手紙をそのサービスを使って送る事にしました。ちゃんと届いてるかな。卒業式の次の日に届くようにしたんだけど。

この手紙が届く頃、私は、いません。

骨は…貰ってくれた? ごめんね貰ってくれって頼んじゃって。でもどうしても裕香ちゃんに貰って欲しかったんだ。裕香ちゃんって書くの(呼ぶの?)久しぶりだね。小学校の時は私、裕香ちゃんって呼んでたよね。懐かしいな。いつからお互いに名前を呼び捨てで呼ぶようになったんだっけ。


scene 3


私の家の郵便受けに一通の手紙の封筒が入っていた。差出人は吉澤美和とあった。その手紙を見つけた瞬間、私は急に体の力が抜け、その場にへたりこんでしまった。ありえない。何故。どうして美和から手紙が送られてきたのか。美和はもう、この世にはいない。
センター試験が終り卒業を控えた3月。美和は何の前触れも無く突然自殺した。私には何も言わず、メールも何も残さないで、携帯の電池が切れてどこからも繋がらなくなるように自殺したのだ。自殺の前の日、私と美和は普通に会って、話していたし、メールもやりとりしていた。学校でいじめられているということもなかった。普通だったはずだ。何も変わりはなかったはずだ。
死因は手首の静脈と動脈を傷つけた事での出血多量。話によると両方の手首と腕に深い傷と浅い傷があり、おそらく、静脈を傷つけただけではいつまでも死ねなくて、それで動脈まで傷つけて体に残っていた血を出した、という事だった。美和の遺体には腕に無数の傷が付いていて隠せないので、包帯が巻かれていた。遺書が残されていた。そこには両親への今まで育ててもらった感謝の言葉と、これから生きていく自信がなく自殺すること、そして、骨を友達の私──渡辺裕香に渡して欲しいという事が書いてあった。その遺書には自殺する理由らしい理由が書いていなかった。どうして美和が自殺したのか美和の両親も分からなかったらしく、美和が自殺した当時は半狂乱気味に私に美和の話を聞きに来た。いじめはなかったのか、男が関係しているのか、何か変なものにハマっていなかったか、色々聞いてきた。私は何も知らなかった。いつも美和の横にいたのに、美和の事を何も知らなかったのだ。
美和の両親は不思議と私を疑わなかった。小学生の時からの唯一の友達だったからだ。美和には私しか友達がいない。だから、通夜、葬儀、火葬に友達として参列したのは私一人だった。遺書の通り、私は美和の骨を分けてもらった。美和の両親から「あの子はもう結婚も出来ないから左手の薬指を貰ってくれる?」と言われ、私はその通りに左手の薬指、指輪をはめるところの骨を小さなガラス瓶に入れ、コルクの蓋で封をした。美和の骨が入ったガラス瓶は、物が物なだけにどこにも仕舞う所が無く、私の飾り棚の上に置かれてある。
そして美和が自殺してから12日後、美和から手紙が届いた。卒業式の翌日だった。私はもう学生ではない。3月、まだ桜も咲かない寒い季節。私は玄関先に座り、美和からの手紙の封筒を見続けていた。


scene 4


ちょっと待ってて、と電話で言いながら美和はなかなかやってこなくて、こちらから電話をかけようかとした時に美和はやってきた。遅いよ、と私が言うと、美和は本当は5分ぐらい前に来ていて私が美和の事を待っている様子を見ようと隠れていたらしい。とりあえず軽く美和の頭を叩いた。

「いや、裕香が私の事待ってるのっていいなあと思って」

「意味わかんない。寒いんだから待たせるな」

「遠くから写真も撮ったんだよ、ほら」

私は美和の携帯を強引に奪ってその画像を消してからもう一度美和の頭を叩いた。

「…いったいなぁ、写真撮ったくらいで」

「盗撮されれば誰だって怒る。しかも待たせやがって」

「ごめんって、コンビニであったかいもの奢るから。あんまんと肉まんとピザまん、どれがいい?」

「おでん」

「えー? ん、まあいいけど」

「大根とはんぺんとそれとココア」

「お金、そんなにもってないんですけど。…おでんにココア?食べ合わせ悪くない?それ」

「とりあえず何でもいいから食べたい。つか寒い。マジ寒い」

なんだかんだで私と美和は友達だった。普通に友達がする事はやっていたと思う。学校で宿題を見せたり、休み時間に話したり、カラオケに行ったり、買い物したり。普通過ぎて何も書くことが無い。コンビニでは美和におでんとココアを奢ってもらった。美和が大根をはんぶんこしてというので半分分けてあげた。あーん、と美和が口を開けるので雪を放りこんだ。ひっどーいと美和は言いながら笑った。


scene 5


この手紙は裕香ちゃんにしか送っていません。遺書と一緒に同封しようかなと思ったんだけど、そうすると多分他の人、お父さんやお母さん、そして警察の人に見られるだろうから、裕香ちゃんにだけに届くようにしました。だって裕香ちゃんに迷惑かけちゃうの嫌だったし。裕香ちゃんにだけ私の自殺の理由を知って欲しかったんだ。

何から書けばいいのかな。裕香ちゃんとの事はいっぱいありすぎて、どこから書けばいいかわかんないや。

私がこれから書くことは、もしかしたら裕香ちゃんを苦しめるかもしれないけど、本当は自分の中だけにしまっておいた方が良かったのかもしれないけど、書くね。

scene 6

玄関に座りっぱなしで何してんの、風邪ひいちゃうから部屋に戻りなさい、という母親の声がして、私はやっと呆然とした状態から我に帰る事ができた。だが、それと同時に死んだはずの美和からの手紙の存在が私の心を乱していく。
心臓がどくどくと鳴っている。もしかしたらこの手紙はとんでもないものではないのかという予感がしたからだ。薄い桜色の封筒。美和の字で書かれた私の住所と差出人。これはきっと誰にも見せてはいけないものなのだろうと直感で思い、急いで自分の部屋に戻り、部屋の鍵を閉めた。
今日配達された手紙を受け取ったのが私でよかった。母親が受け取ったのなら家の中で事件になっていただろう。手紙を開封するのは気が重かった、が、手紙を見ない事にはどうにもならない。ふと美和の薬指が入っている小瓶が目に入る。死んだというのにまだそこにいるようで、私は小瓶を机の中に仕舞った。そうしないと美和が一緒に手紙を見てるようで嫌だったからだ。手紙の封筒は赤いハート型のシールで封がされており、私は何を思ったのか赤いハート型のシールが破れないようにと丁寧に手紙を開封することにした。
何が異常なのか私にはわからなくなっていた。美和が自殺した事は一般常識的に異常な事ではある。卒業式を前に女子高生が自殺したという事件は全国ニュースにもなった。美和が自殺した理由は本当に何も無く、報道する側も事件の報道する方向性が見出せずに「将来を悲観して」やら「生きる気力が無い若者症候群」というような感じで美和の自殺の報道は2日間ぐらいで終わった。自殺する人は多い。だが学生が卒業式前に自殺する事は稀である。そういう意味で美和の自殺は異常だった。
そして今、手に取っている手紙も異常だ。最初のページに目を通して、どうして死んだはずの美和から手紙が届いたのかはわかったけれど、それでも異常だった。自殺する事を仄めかす内容の手紙で、実際に美和は自殺したからだった。つまりこの手紙が美和のいう日時指定配達サービスで投函された時点で美和の自殺は決まっていたのだ。美和が生きていればたちの悪い冗談で済んだのだが、実際に自殺してしまった。計画的な自殺。頭が混乱していくのが自分でもわかった。

scene 7

裕香ちゃん、昔から私と一緒にいた裕香ちゃん。私と裕香ちゃんの最初の出会いって覚えてる? きっと覚えてないよね。
小学生の時ね、図工だったかな、私が絵の具セットを忘れて、その頃は私は誰にも何にも言えないおとなしい子だったから先生に言うのもできなくて困っていて泣いてたんだけど、その時にね裕香ちゃんが絵の具セットを貸してくれたの。2人で使おうって、それが私と裕香ちゃんとの出会い。クラスメイトだから出会ってたんだけどね、初めて裕香ちゃんが私に声を掛けてくれたの。私はそれまで友達なんかいなくて、一人ぼっちだったんだけど、裕香ちゃんが話しかけてきて、それから私、裕香ちゃんにべったりになったよね。いつでもどこでも裕香ちゃんに付いて回って、うん、迷惑そうに思われてたのはどこかでわかってたけど、裕香ちゃんはね、私の友達なんだ、って。絵の具セットを貸してくれたのは裕香ちゃんにとって些細な事なんだろうけど、私にとってはそうじゃなかったの。嬉しかったなあ。中学でも高校でも一緒に居たよね。迷惑じゃないかなって少し思ってたけど、それよりも裕香ちゃんと一緒に居たかったんだ。

scene 8

私は美和との初めての出会いを覚えていなかった。何となく記憶の底にあるようで、でもそれは見つけられなかった。子供の頃の記憶などそのようなものだろう。全部覚えているようで覚えていない。
覚えているのは何となく強い印象がある記憶だけで、その印象が強い記憶を覚えている理由など子供の頃だからよくわからない理由で覚えているのだ。例えば私が小学1年の頃、家の近くにマクドナルドが出店し、連れて行って貰いたがったのだが、何となく親に言い出せずにいたという思い出がある。何故こんな記憶をすぐ思い出せるのか、マクドナルドの近くを通るたびに思い出すのかよく分からない。他にも月にアメリカがあると思い込んでいた頃の記憶や、学校の近くでキリスト教関係の宗教関係者が絵本のようなビラを配っていた事など、それは夜に見る夢のような感じで端々に覚えている。子供の頃の記憶とはそういうもので、きっと美和が手紙で書いているのはそのような些細な事なのだ。私には些細で、美和では些細な事で無かった事。小学二年の頃から美和はずっと隣に居て、それが普通だった。だから初めてあった時の記憶など覚えていない。

scene 9

子供の頃の話ってなるとつい長くなるよね。他にもいっぱいあるけれどそれを書いちゃうと紙がいくらあっても足りなくなるからやめとくね。
私がこうやって手紙を裕香ちゃんに出したのは他でも無く私が裕香ちゃんに伝えたい事があったからです。

今まで私は裕香ちゃんと一緒にいて、居続けて、高校も同じで一緒に居て、私にとって裕香ちゃんは初めての友達で、ずーっとずーっと一緒だと思ってたんだ。裕香ちゃんはいつでも居るって感じでさ。

でも私たち卒業すれば別々になっちゃうよね。進路も違うし。

私はそれが分からなくて、裕香ちゃんがどこか遠くに行ってしまうというのが分からなくて、考えても考えても分からなくて、どうしていいのかわからなくて、卒業が私たちを裂くのならば、その前に死んでしまおうと思ったんだ。

ねえ、裕香ちゃん。好きだよ。

絶望的に好き。

友達の好きなんかじゃなく、本当に好きなんだ。

裕香ちゃんにとって私はただの友達かもしれないけど、私にとって裕香ちゃんは特別に好き。卒業が私たちを引き裂くのならこの幸せのまま死にたい。そう思って私は卒業式の前に死ぬことを選んだんだ。こんな形での告白は卑怯かもしれないけれど、裕香ちゃんならこれまでもこれからもただの友達でいようと言うだろうから死ぬことにしました。

気持ち悪いって思うかもしれないけれど、思ってるかもしれないけれど、私には告白する事なんてできなくて、こんな形でしか伝えられなくて、ごめん。

ごめんね。

scene10

最後に「ごめんね」と記された美和からの手紙を読み終わって私は何もしてあげられなかった無力感に包まれた。返事をしたくても美和はもうこの世にはいない。美和はどんな気持ちでこの手紙を書いたのか想像するしかなかった。好きと書かれた手紙の文字がとがりながら震えていて、きっと手紙でも告白するのが怖かったのだろう。私は手紙を封筒に戻し、机の中に仕舞った美和の骨が入った小瓶を取り出し、机の上に置いた。そして、気づけなくてごめんね、と誰もいない部屋で一人呟いた。
翌朝、私は美和が眠る墓地へと向かっていた。私の中にあるこの思いとは何かを確かめるためだった。そして美和のお墓の前で私は泣いた。贖罪でもなく後悔でもなく、ただ失ってしまった美和という存在が寂しいと思って泣いたのだ。手紙には裏にPSと書かれて、裕香ちゃんありがとう、と記されていた。きっと美和の命は卒業式が奪っていったのだろう。卒業は死神のようだと思った。
 
JUGEMテーマ:同性愛/レズビアン

Pixiv ショートストーリー maiさん作『ナチュラル・ガール』

Pixivのショートストーリー

Pixivで募集していた『彼女から彼女への手紙』のショートストーリー企画、4作目!
ありがとうございます!作ってくれたのは3作目と同じ「mai」さんという方です。←リンクでpixivのプロフィール画面に飛ぶよ!今回はちょっとオトナのお話。そしてmaiさんのサイトができました!こちら→『 泣かないで』こちらもよろしくおねがいします!

作品コメントより

※異性間性描写あり。 異性を好きな女の子に惚れちゃったらディスコミュニケーション! なほろ苦い百合。あまーい百合を書いているとふとこんな百合まで書きたくなります。あまーいの次書かせてもらいます。ビターなものってどのくらい需要ありますか…。



*********


恋をすると、この男は無防備になった。

ナチュラル・ガール
 
 マスカラをぬり過ぎて固まってしまったまつ毛で上目使いはしない。デコラティブな指で甘えるように服の裾を引っ張ったりもしない。危ういミニスカートでもなくタイトなジーパンをはいてお酒を飲みながら親身に話を聞けば男とのベッドまでの道のりは近かった。この場合、隙を見せているのはこの男だがすべて終わってしまってしまえば私が誘ったということになるのだろう。メロドラマやソープオペラと同じくらい下らない性交だ。私は最中、598回『ファック』と心のなかで呪うように呟いた。

 吸い差しのメンソールのタバコを差し出されると私はまずそうにそれを吸った。彼女は嫌煙家なのになぜこの男は今も吸っていられるのだろうか。不味いキスを誰がしたいと思うのだろうか。煙を吐きだしながらそんなことを考えていると眉間に皺が寄るので意味もない笑みをうかべるように心がけた。男も脂がさがった顔をした。
「本当に久しぶりだったんだ。最高ー!」
 あまりにあどけなく叫びだしたりするので、私は少し困惑した表情をした。
「貴美子に悪いと思わないの?」
 私の言葉に忘れていた存在を思い出したように男は苦虫を噛みつぶしたような顔をして首を垂れるので私は男の頭を抱きしめた。貴美子はこういう馬鹿な男が好きだったのか、と私は心のどこかで納得した。発情したこの男には見境がない。嬉しいからファック、寂しいからファック、不安だからファック。シーツがよれて小さな山ができているベッドに身体を埋められると男は瞳を潤ませて尋ねる。
「もう一回、いい? 貴美子は今日、僕の部屋には来ないよ」
 私は否定も肯定もせずに男のするがままに身を任せる。無防備にもほどがあるな、と私は思った。安いリネンのシーツでは私の髪が音をたてる。その小さな音は私の心をむず痒くなるようにくすぐる。もうこの音が私から離れてしまうと思うと急に愛おしくなった。私が抱かれているのはこの男の身体ではない。貴美子を愛した身体なのだ。
 組みつ、ほぐれつ、欲望に溺れながら身体にしがみつきむさぼっていると、玄関から音がする。鍵穴をいじる音で私は貴美子だと気づいたが男はまだ私の身体しか目にないようなので私が上になった。壊れてしまうなら最後まで楽しめ、それが最初に自分のなかで決めたことだった。貴美子の足音が聞こえると私は歓びと恐怖がない交ぜになった感情で震えあがった。貴美子が戸を開ける音がする。
「智志、急にタマゴ買って……きた」
 ビニール袋に入ったタマゴが落ちて割れる音がした。
「ははは」
 私は男の身体から落とされるようになりながら、その音を聞いた。斜めになった視界で貴美子の顔を見た。ありえないと考えていることが目の前で起きていると人間は硬直するらしい。思わず笑い声が出た。
「どういうことなの?」
 貴美子に問いかけられている男はすっかり動転しているようで滑稽だった。すべて私が仕組んだことだった。男がトイレに立った時メールで貴美子を呼び出した、それだけ。
「ベッドの上のこと聞きたいわけ?」
 下着を身に着けながら貴美子の質問に答えると、視線が憎悪で光っていた。そして瞬時に貴美子の手が私の顔を叩いた。
「佳乃子に聞いたわけじゃない」
「男を寝取られるとそんな反応するのね、貴美子でも」
 もう一度露わになった感情をぶつけるように平手が私に飛んできた。
「私はずっと知りたかったの」
「聞きたくない」
 貴美子は落としたタマゴを拾って台所のほうに行く。服を着終えると私は台所に行った。
「貴美子は欲しいものふたつでいつも迷うと『どちらにしようかな』って始めるでしょう。それってもう選んでることになってるの、知っているのかなって」
 貴美子は困惑している。
「それと智志と寝ることが何の関係があるのよ」
 声を荒げる貴美子をなだめるように私は説明する。
「私はどの好きかどうか分からなかったから、寝たの」
「智志のことが好きだったの?」
「いや、貴美子がなんで迷いもなく選べたのか、知りたかったから」
 私がそこまで話すと貴美子はうずくまって腹を抱えてうずくまった。表情は伺えない。
「ワケわかんない。あんたどっかおかしいよ」
私は少しためらって答えた。
「うん、知っている」
 貴美子の嗚咽を聞きながら台所の窓から見える青白い空をぼんやりと眺めて貴美子の言葉を待った。絶縁の最後の言葉を。
貴美子は何も言わず台所から去って男を問いただし始めた。私がここにいることが些末で詰まらないことに思えて靴を履いて外に出た。

 笑うと叩かれた頬が引き攣れて痛い。生協でアイスを迷う貴美子。レポートが終わらないのにファミリーレストランで益体もないことを喋りつづけた夜。男と付き合い始めた報告をしたときの笑顔。記憶の貴美子はいつも可愛いらしかった。私のほうがよほど貴美子のことを知っていたのに私は選ばれなかった。ぺたんこの靴を履かなくとも、髪の毛を巻かなくとも私は貴美子のありのままを愛せるのに。私はいつの間にか笑いながら泣いていた。

<了>

おたよりや感想はpixivのmaiさんの作品からどうぞ!!サイトもよろしくおねがいします!

そしてpixivの小説部門の企画で「彼女から彼女への手紙」の企画もありますので、どしどしご応募よろしくおねがいします!金払えないけど!w
 

Pixiv ショートストーリー maiさん作『4U』

Pixivのショートストーリー

Pixivで募集していた『彼女から彼女への手紙』のショートストーリー企画、3人目登場!
ありがとうございます!(それと連絡遅くなってすみません…) 作ってくれたのは「mai」という方です。←リンクでpixivのプロフィール画面に飛ぶよ!


作品コメントより

出されなかったラヴ・レターをめぐる甘酸っぱい百合の物語。 片想いをしているひとへ、片想いをしたことがあるひとへの敬意と応援と百合を込めて書きました。『彼女から彼女への手紙』という素晴らしい企画に参加させて頂きました。題名はFor Youの当て字です。


『4U』



 怠惰に伸びた黒い髪を奈緒は器用にひとつにまとめる。履き古したジーパンとカラーが痛んだシャツを着て、埃にまみれてベッドの下に手をのばす。奈緒はきれい好きではあるが、学生と言っても独り暮らしの女性が毎週できる掃除などたかが知れていて、どうしてもおざなりになってしまう部分がある。
 吹く風にどこかに柔らかさを感じる3月。奈緒はこの部屋を引き払い、奈緒が務める職場もとい病院の近くの寮に生活の場をを移すため、引越しの準備をすすめている。ただ大きな家具の下を見忘れていることに気がついた。
 触れ合ったりするための、怠惰になるための、身体を休めるためのベッド。その下には意外と散漫としている。どこかに失くしたと思っていた本や小さなピアス。なぜかスプーンまでも落ちていて奈緒は首をかしげた。奈緒はダンボールの箱に入れられた重々しい高校時代の卒業アルバムを見つけ、どうせ捨ててしまうなら、最後に一通り目を通しておくか、とぱらぱらと写真をながめる。
 アルバムに挟まれていた一枚の白い封筒が奈緒の目に止まると、手に電流が流れたように、少し手が震えた。皺のあと、ちいさなヒツジのマークの透かしが入っている。私は知っている、と奈緒は確信を持ってその封筒を開けた。

   玲へ
   ずっと好きだよ
   奈緒

「ああ」
 奈緒のその声は感嘆ではなかった。声帯が震え、口からふと漏れる動物的なうめき声。そして震えたのは声だけではなかった。心は津波にさらわれるように、出されなかった手紙は奈緒を思い出に連れ去る。奈緒は掃除を一時中止して、石鹸で手を洗い、やかんを火にかけた。
 手紙をもう一度みつめて、あの気持ちを思い出していた。
「不器用だよね」
 奈緒は誰に言うのでもなく言葉を紡いだ。玲とまともに口をきいたときの玲の言葉を。



 まだ夏の残照を残す夕焼けはなぜかノスタルジックだなあと奈緒は思いながら、教室の窓をぼんやりと眺めていた。
「なんか朝川って頭良いけど、不器用だよね」
目の前に数学のノートを写すことに飽きました、と主張する顔の金井玲がいた。
「テストの点数はいいけど、しょっちゅう授業中に本読んでて取り上げられてるし、サボってるし。あんまり教師のシンショーってやつ、悪くしないほうがいいんじゃん?」
 金井は疲れたーと言いながら伸びをする。短く切りそろえられ赤茶けた髪はさらさらと流れ、天使の輪を作っている。入念に長さをチェックされたスカートの裾から日本人離れした長い足を組み替える。
 奈緒は音を立てて文庫本を閉じる。鋭い目線で金井を一瞥して、口調が尖りすぎないように注意して言葉を選んだ。
「私でもそう思うよ。何の因果で同級生の課題をみなくちゃいけないのかと思うと、これからの授業態度改める気になったよ。最後の言葉はそのまま金井に返すけど」
「正直だね」
 奈緒の言葉に金井は気分を害すどころか笑っていた。奈緒はつかみどころのないこの同級生が苦手だった。
 金井玲はふわふわしていた。長く縦に伸びた身体はどこか浮世離れしていて、何より金井の態度が安定していなかった。成績は英語と生物はトップクラスで模試の結果にもよく名前が載っていた。数学が壊滅的。しかも週半分は欠席。本人はどこ吹く風とヘラヘラ笑っている。よくつるむ友達はいるみたいだけど、金井はあまり自分のことを喋らないらしい。
 奈緒がここまで調べたのは授業態度の悪さと協調性がないという理由で問題集を解く代わりに、金井の数学の課題をアシストしろと提示してきた数学教師のせいだった。口臭におうハゲ教師め、学費返しやがれ、と普段では絶対口にしない悪態を心のなかでついた。
「朝川ー。これどうやって解くの?」
「それはその前の前の公式と直前の公式を使うんだよ」
 愚痴をこぼしながら、金井は課題をこなしている。奈緒はシャープペンシルを動かし、長ったらしい数字列を書きだして、こことここ、と丸をつける。
「はあ。なるほど」
 教え方うまいね、朝川は、とまた笑って金井は手を動かす。
「朝川に迷惑かけてるけどマジ感謝してる。数学苦手だから心配してたんだ。けどあのクソ教師に教わるのだけは癪に障るって考えてたから」
「金井は器用だな」
 動かしていた手を止めて、金井は顔を上げて奈緒を見つめた。少し疑問を浮かべた視線とぶつかる。
「しゃべりながらよく解けるなって思って。あとクソ教師って部分は同意できる」
 奈緒の言葉で金井の目が微笑む。金井に友だちが多い理由がその微笑みでわかった気がする。
 下校時間になると奈緒と金井は一緒に駅まで歩いた。腹の足しになるか分からないけれど、と断って金井はあめ玉をくれた。ヨーグルトの甘すぎない懐かしい味がして、奈緒はどこか切ない気持ちになった。
「朝川、今日はありがとう。また教わることになるかもしれないから、今度なんか奢る」
 金井は頭を下げる。奈緒はそれにびっくりしてしまって、口調を速めた。
「そんな、いいよ。大げさなことじゃないし、それより明日ちゃんと学校来てよ」
「わかってる。じゃね」
 軽やかに金井は改札に吸い込まれていった。そして金井は翌日また学校を休んだ。

 毎週水曜日の5限後は金井と一緒に勉強する日になっている。奈緒は一週間の復習と金井が苦手とする箇所をチェックして、問題集から問題を選ぶ。
「学校まじめに来てれば、もっと簡単に解けるのに」
「そうだねえ」
 奈緒の言葉に金井は生返事をする。奈緒は少し苛立った。金井は飲み込みいいのに、やればできるのに。
「金井、あんた出来るじゃん。なんでやらないのよ」
 口走った言葉に棘があったことを知って奈緒は後悔した。別に金井を否定するつもりじゃないのになんでうまく言えないんだろう。奈緒は羞恥心から俯いた。
 金井のほうから変な音が聞こえる。奈緒は探るように顔を上げて金井を見た。
 金井の爆笑を堪える顔。真っ赤になってほころんだ口元を隠している。
「ぶっはあ。ごめん、心配してくれて嬉しいんだけど、ぶはっはは」
「今のどこが笑うとこなのよー」
 違う意味で羞恥心がわいて、奈緒は数学の教科書で金井を殴る。
「だって、ははは朝川がそんなに情熱的だと思ってなくて、あははははは。やっばいとまんな、ははは」
「笑うのやめてよ!」
「ごめん。はは努力してるんだけど、あっはっは」
 金井は笑い死にしそうになっていて、奈緒は怒るのが馬鹿らしくなって金井と一緒に笑った。
「ほんと朝川って感情表現下手だよねえ」
 腹筋が引き攣れそうになりながら金井は言った。
「別に、不便は感じないし……」
 奈緒は極まりが悪そうに顔を背けた。
「笑うと、すっごく可愛いのに」
 金井が屈託なくそんなことを言うのが奈緒にはまだ苦手だった。奈緒は屈託などない金井には後ろめたさを感じると同時に憧れた。難しい顔などせずに笑っていられる金井は何も考えていないように見えて、実はいろんなものを見て、知っているのだ。奈緒はそんな金井に対してばつの悪さを感じて文庫本を開いた。金井はまた甘すぎないヨーグルトのあめ玉を口に放り込んで、器用にシャープペンシルを動かす。
「朝川っていつも何読んでるの? 理系クラスなのに本読む人間ってあんまりいないから」
 奈緒は金井の問題集を解いている頭を見つめて、また本に視線を落とした。
「今は俳句集」
「渋いね、女子高生がそういうの読むの、カッコイイじゃん」
 金井は器用に手を動かしながら、言う。金井は意味も底もない笑みを浮かべて、人当たりは柔らかいけれど、誰とでも一線を引いて付き合っているような人間だと奈緒は最近知った。本当に金井のことを奈緒はなにも知らない。知りたいのかもしれない、けど弾かれるのは怖い。奈緒はぼんやりと本を眺めながら、自分の気持ちの名前を探した。

 金井と親しくなることは奈緒にとって簡単だった。水曜日の補講を一緒に帰ったり。課題のスケジュール確認に、聴いている音楽や観ているTVのエピソードが添えられているメール。テスト前、深夜の息抜きという長電話。
 奈緒はそれでも不満足だった。金井玲に触れてみたい、と思っていた。シャープペンシルを握る玲の手は私の手とどう違うのだろうか、玲はあのあめ玉を甘いと思うのだろうか。奈緒は自分を貪欲だと思いながら、玲のことを考えていた。玲に触れれば分かるかもしれない、と奈緒は淡い期待を胸に抱いていた。

 2学期の中間テストの玲の数学の成績は飛躍的に伸びた。奈緒は嬉しかった半面、これから玲の数学をみることはないかもしれない。いつもの水曜日の放課後、玲の答案用紙をチェックしながら不謹慎と知りながら奈緒はそんなことを考えていた。
「奈緒の教え方、上手かったから」
 友達に答案用紙見られるのは恥ずかしいなー、と玲は照れながら笑う。
「やるべきことを玲がやっただけでしょう」
「褒めるくらいしてよー」
「むしろ私も褒めて欲しいな、補講しながら自分の勉強もしたんだから」
 奈緒は玲を見つめ、玲の瞳はチョコアイスみたいにとろけた。奈緒と玲の距離は秋から確かに縮まっていた。
「奈緒は何が欲しい?」
「玲のくちびる」
「ははは、私もだ」
 奈緒も玲も笑いながら手を触れて、そうすることが当たり前のように互いのくちびるを重ねた。
「なんか慣れてる」
 奈緒はちょっと不服そうに玲の暗褐色の瞳を見つめた。
「そんなこと、ない」
 玲の語尾が奈緒の口に吸いこまれるように、また触れた。柔らかくて、気持ち良くて玲も奈緒も何度も何度もばかみたいに触れた。玲の制服の上着のポケットに入った携帯電話が震えると、玲は奈緒から身を引いた。
 奈緒はその時の玲の目を忘れることはなかった。冷え切ってなんの感情もないような、いつもの笑顔が嘘のように別人で、着信番号を見つめていた。奈緒は静かな教室でのキスよりも玲のその表情を見てしまったほうが罪悪感を強く感じた。
「出なくていいの?」
 奈緒はつい言葉が出た。本当はこのまま触れ合っていたいのに玲のあの表情が奈緒には怖かった。
「奈緒は電話に出て欲しい? 私が出ればたぶん私は……」
 玲は先ほどの情熱を忘れ、笑顔も浮かべず戸惑った子どものような表情のまま奈緒を見つめた。
「ごめん、違う。これは私の問題なの。……ありがとう、奈緒」
 玲は戸惑ったままあどけない微笑みを奈緒に向けた。奈緒はつられるように笑みを玲に向けた。奈緒を残し玲は携帯電話だけ持って教室を飛ぶように駆けだした。玲はそのまま学校から姿を消した。



 出されなかった手紙を片手に奈緒はコーヒーを啜る。昔の出来事がジグソーパズルのピースのように頭の中にふりかかり、手触りをひとつひとつ確かめた。玲と二人で過ごした教室。数字の羅列。ヨーグルトの甘すぎないあめ玉の味。わら半紙の匂い。私の読んでいた本。今はもうおぼろげな玲の笑顔。玲の手。震えた玲の肌。夜がにじむ夕焼け。そして開く前に摘み取られた自分の気持ち。玲との思い出はピースのかけたジグソーパズルだ。奈緒は玲を思い出すたび完成されないパズルを何度も繰り返しやり直す。


 玲は渡米したのだと、奈緒は担任教師知らされたそして一通の手紙が奈緒の手元に残されていた。父に会いに行きます、と。
 玲の父はピアニストで放浪癖があり、それが原因で玲が小さい頃離婚した。半年に一回「元気にしているか」と差出人の住所もないハガキが届けられていた。ほとんど暮らしたことはない、その父親から会いたいという手紙が2週間前に届いた。
 母にはもう新しい恋人がいるが、私はもう一度父に会いたかった。そしてほんの少しだけ父と一緒に日常を過ごしたい。私は父をとても憎んでいるけれど、それと同時にとても強く想っていたの。
 何もかも諦めたふりして笑っているのを見抜いたのは奈緒だけだよ。ずっと言えなくて、ごめん。奈緒と一緒にいて誰かが誰かの代わりになることなんてないと信じられたから、行くよ。奈緒に会えて嬉しかった。ありがとう。


 玲の手紙にはそんなことが書いてあった。そのときはじめて奈緒は玲の早熟さや情熱を理解した。そして奈緒は幼くて何も手にしていない自分を、初めて子どもだと思い知った。

 
 時間は万能薬ではない。悠久の流れがすべてを解決することなどないのだ。玲とのことを思い出すたびに、奈緒の心は軋み、音をたてる。奈緒はベッドを乗り越えてベランダで煙草に火をつけると、ため息交じりに白い煙を吐きだす。しかし、と奈緒は考える。この痛みすら忘れてしまったら自分はただの愚か者に堕ちるだろう。奈緒は手紙通りずっと玲のことが好きなのだろうと知っていた。玲への想いはかたちを変え、名前を変えて、好きであり続けるだろう。実ることがない恋を不毛だとか滑稽だと言われるかもしれないが、それは奈緒にとってはなによりかけがえのない感情なのだ。奈緒はひとを想うということを玲から教わった。その記憶は奈緒を何よりも豊かにしていた。
「玲だってじゅうぶん不器用だったよ」
 独りごとは春風にさらわれ行方知れず。奈緒は出されなかった手紙にくちびるを落とし、自身の弱さも痛みも幼さも認めた。それは奈緒にとっての矜持であり、認めるということはスプーン一杯ぶんの少しの愛であることを奈緒は知る。

Love messages 4 U !!

(片想いをするすべてのひとへ、愛と勇気と祝福を!)



   <了>

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Pixiv ショートストーリー 飴夜菜(いよな)さん作『ごめんなさい』

Pixivのショートストーリー

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 「美咲ちゃんへ」
中学生最後の日、
自分の名前が書かれた紙が一枚、靴箱の中に入っていた。

美咲ちゃんへ。

いきなりこんなこと言うと変だと思うけど、
私は美咲ちゃんの事がすきです。
一人の女の子として好きです。
いっつもいっつも大好きっていってるから伝わらないかもしれないけど
私は美咲ちゃんと付き合いたいと思ってる。
欲を出すと手をつないでデートがしたい。
キスだってしたい。ずっと一緒にいたかった。
気持ち悪いよね。でも好き。大好きだから
こうして手紙を書きました。
美咲ちゃんの顔を見てると言えなかったから。
明日からはもう高校生だけど、校内で会っても声かけなくていいからね。
迎えにこなくてもいいから。私はがんばるから、美咲ちゃんも幸せになってね。
美咲ちゃんが大好きでした。

ごめんなさい、さようなら。



手紙にはそう書かれていた。
春嘉が自分のことを慕っていたのは知っていたし、
自分も春嘉の事は好きだった。
しかし、それが恋かどうかなんて考えたことはなかったし、
いつも一緒にいるのが当たり前になっていた。

『ごめんなさい、さようなら。』

最後のその言葉だけが頭に響いている。
きっと春嘉は振られると思っている。
自分の気持ちを聞かないで。

美咲は靴をすばやく履き替えると
手紙を握り締め、走り出していた。

―*―*―*―*
「は、るか...!!春嘉ぁ!!!」
後ろから自分の名前を叫ばれ、とっさに涙を拭いて振り返る。
「美咲...ちゃん・・・」
顔を見ただけで涙があふれそうになる。
「なん、で、帰ったのよ・・・」
ひざに手をつき、肩で息をしながら上目がちに春嘉をキッと睨む。
「ごめん・・・私・・・」
「私だって・・・・私だって春嘉の事好きよ!!」
ひざに手をついたまましたを向いて叫ぶ。
春嘉は信じられないといった顔でただ見つめるだけだ。
「なによ私の返事も聞かずにさようならって、私が、どれだけ春嘉の事好きか、も、しらない、で・・・」
後半になるにつれて上ずった、涙声になる。
「ごめん、ごめん美咲ちゃん。ごめんね。」
それにつられたように春嘉も涙声になり、次第には二人して泣き始める。

『ずっと一緒だよ』

二人の間で、そう会話が交わされた。









おまけ




メールであっさり

啓へ
おはよ^^
突然だけど、啓のこと好きなんだ。付き合って??

Re:啓へ
和おはよ
相変わらず突然すぎるね。うん?私たち同性だよね??

Re:Re:啓へ
突然ごめんよ´ω`同性だけど。好きなんだ。
で、返事は?

Re:Re:Re:啓へ
え、本気?ならごめん。私好きな人いるんだ。

Re:Re:Re:Re:啓へ
本気さ本気。
そっか。。。相手同性??

Re:Re:Re:Re:Re:啓へ
うん・・・女性の人。

Re:Re:Re:Re:Re:Re:啓へ
じゃあ私も応援するからさ。相談してよね

Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:啓へ
ありがとう。ごめんね。これからも親友でいてくれる・・・?
ごめん、調子いいよね・・・

Re:ありがとう
うん。これからも親友。でも、
幸せになってくれないと絶交だよ??
それじゃあ仕事いくね





「異性に負けるよりつらいなぁ・・・」
携帯を枕の横に無造作に転がし、枕に顔をおしつける。
「泣いたっていいよね。女のこだもん」
自嘲的に笑い、泣き始める。ほんとは今日は仕事は休みだ。
今日はおもいっきり泣こう、そう決めていたから。

『好きな女性ができたよ』

啓の恋が叶うまえに和に好きな女性ができるのは
そう遠くない未来。


<了>


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Pixiv ショートストーリー 飴夜菜(いよな)さん作『大好きなあなたへ』

Pixivのショートストーリー

Pixivで募集していた『彼女から彼女への手紙』のショートストーリー企画、遂に参加者が!
ありがとうございます!作ってくれたのは「飴夜菜(いよな)さん」という方です。←リンクでpixivのプロフィール画面に飛ぶよ!



『大好きなあなたへ』


アリサへ

いきなりこんな手紙送って驚くかもしれないけど
ごめんね・・・・



私ね、アリサのことが好きなの・・・・
友達としてじゃなくって、恋してるの・・・


いつも、アリサと一緒にいて、楽しかった。
でも、だんだんとアリサと一緒にいると
なんだか、胸がドキドキしたり、「かわいいねっ!」とか、言われると
嬉しくって・・・

最初は友達として好きなんだと思った。
でも、だんだん違うことに気づいた・・・

私はアリサのこと愛してるんだって・・・



でも、こんなのおかしいって思って、女の子同士なのにって・・・

でも、この気持ちはどんどん強くなるばかりだった・・・

伝えたいけど、この気持ちを伝えたらきっと、
アリサと今までみたいにはいられないかもって、

アリサが私のこと嫌いになっちゃうかも・・・って思ったら
今のままでいいと思ってずっと黙ってた。

これからも黙ってるつもりだった・・・

でも、私、引っ越すから・・・

もう会えないなら最後に気持ち伝えたっくて・・・・
直接言うのが恥ずかしいから手紙に書いたよ・・・

ゴメンネ・・・・
いままでありがとう。
こんな手紙書いて本当にゴメンネ。




               フェミアより



- - -

「あれ?手紙?」

真っ白な封筒が、ポストの中に入ってる。

“アリサへ
    フェミアより。”


フェミアつまり雅(みやび)からだった。
雅という名前だけど、小さい頃周りからフェミアと呼ばれていた。

今じゃ私しかフェニアと呼ぶ人はいないみたいだけど、
でも、もうフェニアは居ない、先週引越してしまったから・・・


封筒のなかを開けて手紙を取り出す。

「・・・・・・・」

これは・・・・・なんで?


「っ!」

急いで部屋に戻って、
フェニアの住所を調べる・・・

ない・・・・
どうしよう・・・

そうだ!学校の先生に聞けば分かる!!

えっと〜学校の電話番号は・・・・


「あ、もしもし、戸田です。先生ですか?」

『あぁ、そうだが、どうした?』

「あの、フェニア・・・浅野雅ちゃんの、住所知りたいんです。」

『あぁ、いいぞ、・・・』



「ありがとうございます!」


- - - -


えっと〜確かこのあたりかな??

フェニアが住んでいたところは元いた所から、
電車で1時間のところだった


えっと〜・・・あった!フェニアの家!!!

少し緊張しながら、チャイムを押す。


ピンポ〜ン


「は〜い!」

ガチャッ

「っ!ア、アリサ?!」

「お久しぶり!フェニア!!」

「え?!な、なんでここにいるの?!」

フェニアは驚いているようだ、

「手紙ありがと、フェニアの気持ち、ちゃんと伝わった。」

「あ!!あ、あの・・・・ごめん、あんな手紙・・・
 ごめん、私、変だよね・・・・」

フェニアは、涙が出そうなのを抑えて、あやまった。


「・・・ほんとだよ、意味わかんない、あんな手紙、」

「ゴメン・・・」

「なんで、あやまるの・・・
 どうして、引っ越しから言うの?」

自然とアリサの目から涙が零れ落ちる。

「え?アリサ?」

「嫌いになんかならないよ、なれるわけない、
だって、だって、」

アリサは、途切れ途切れの言葉で言う。

「手紙もらって、嬉しかった。すごく、すごく、
 だって、私も、好きだから、 
 フェニアのこと、大好きだから、」



「っ!」

「だからっ!フェニアが引っ越したとき、
 すっごく、悲しかった、家で、ずっと、泣いてた、」 

「・・・嘘?」
フェニアは驚きと喜びで声が震えた。


「私がフェニアって呼ぶ理由知ってた?」

「え?」

「私だけが、フェニアって呼んでるっておもうと
 私だけ特別なんだって想うから、
 だからなんだよ。
 私は、私も、フェニアのこと、愛してる。」


「っ!ア、アリサ・・・・う、うわぁーん」

フィニアはボロボロと大粒の涙を零した。

まるで、子供のように泣いた。

「フェニア、」

アリサはフェニアを優しく抱きしめた。

「アリサァ〜大好きぃ!ずっと、ずっと、」

「私も、大好き。」



              (了)



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